リーディングス 数学の哲学―ゲーデル以後

リーディングス 数学の哲学―ゲーデル以後 の詳細

日本においてどうも数学というものは、一つの「技術」として受け取られる側面が強く、数学基礎論や数学の哲学の領域には関心が払われることは少ないようです（田中一之『ゲーデルと20世紀の論理学１』より）。しかし、我々がそうやって「使用」している数学的手法及び知識と、自然科学そのものが持っている経験論的なテーゼの間には、乗り越えがたい齟齬が存在しており、この二つをいかに調和させるかという問題は、常に哲学者にとってもっとも深刻な問題であり続けてきました（代表例としてはウィーン学団）。この本は、２０世紀において展開された数学の哲学に関する論文の、最も基本的なものを訳したもので、日本語で読むことができる殆ど唯一の「数学の哲学アンソロジー」となっています。特に「ベナセラフのジレンマ」で知られるポール・ベナセラフの『数学的真理』を訳した価値は非常に大きく、この論文は現在、数学の哲学を考える上での最も基礎的なテーゼとなっています。他にも「数学の基礎づけ」というプログラム自体を断念することを説いたヒラリー・パトナムの『基礎づけのいらない数学』（これも最も基礎的な文献の一つです）など、編者の確かな選択眼の下にこの著書は構成されており、数学の哲学に関心がある人間には文句なしにお勧めします。