医療ケアを問いなおす (ちくま新書)

医療ケアを問いなおす (ちくま新書) の詳細

全体の流れは、ここに向かって進んでいきます。「安らぎ」とは結局、自分の置かれた状況のなかで、自分に可能な、自分にとって大事に思われることがらが見だされてそれを気遣うことができ、また人から自分も大事に思われ、気遣われていると感じるなかで、自分にとって可能なその関心事を（場合によっては人から手助けしてもらいながらも）自分で実際に実践でき、その実践に意味を感じられる---そのような心身統合的な、生きられた経験なのである。…安らぎを目指したケアが、相手をどれだけケアしたかではなく、相手がどれだけケアされたと感じたかに係わっていることを示している。カウンセラーの勉強会で、たまたま、”エポケー”という言葉が出てきたのですが、フッサールの章でもわかりやすくは説明してくれています。ここが一番わかりやすいと思います。患者が経験している「病い」を理解し、人間誰もが傷つきやすい仲間であることを自覚するためには、自然科学的なものの理解、医学的なものの見方をいったん棚上げ（エポケー）して、<患者をトータルでみる>ことが必要だ。いや、患者をトータルにみようと努力することによってはじめて、自然科学的なものの理解、医学的なものの見方がおのずから棚上げされていくと言ったほうが良いかもしれない。フッサール、ハイデッガー、メルロ=ポンティをやさしく説きながら、”ケア”という切り口からみたときの現象学的な見方とはどういったものかを、ケアの現場の患者さんとの関わりの事例の中で教えてくれます。とてもわかりやすい内容に仕上げてくれています。